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カップ9『タジャル王子とドゥニャ姫』
カップの9
『タジャル王子とドゥニャ姫』
イラン・アラブ民話
スライマン・シャー王の息子タジャル・ムルクは、緑の都イスパハーンの王子です。
彼が18歳の時、遠方からやってきた若き商人アズィーズに出会います。
アズィーズはタジャル王子にたくさんの品物を見せてくれましたが、その中でも最も素晴らしかったのは、優雅なガゼルが跳ねる姿を描いたリネンでした。
アズィーズは、この作品は樟脳諸島の ドゥニャ姫が手掛けたものだと話しました。そして、彼女がこの世のものとは思えないほど美しく、素晴らしい技巧を持っているということも。
その話を聞いたタジャル王子は、会わずしてドゥニャ姫に夢中になりました。
彼の想いを知った、父のスライマン・シャー王は、正式にドゥニャ姫との婚姻を進めるべく、樟脳諸島へ大臣を派遣しました。
それを受けて、姫君の父であるシャハラマーン王は複雑でした。
ドゥニャ姫が極端に男性を忌み嫌っており、既に近隣諸国の多数の結婚申し込みを退けていることを知っていたからです。
例に漏れずドゥニャ姫は、
『もし私に結婚を強いるなら、夫となる人をこの手で殺して私も自害致します』
と言い放ち、大臣を追い返してしまいました。
しかし、タジャル王子は諦めませんでした。彼は大臣とアズィーズと共に商人のふりをして樟脳諸島に忍び込み、絹織物市場に大きな店を出したのです。
そこに、老婆がやってきました。彼女はドゥニャ姫の乳母でした。
老婆は、ドゥニャ姫の衣装にするための生地を買いに来たと言います。 彼女はタジャル王子の美しさに好感を抱き、姫との仲を取り持つことを申し出ました。
そこで、タジャル王子は、最も豪華な生地を彼女に贈り、手紙をしたためました。
その後、彼は老婆を介してドゥニャ姫との間に何通かの手紙のやり取りをしましたが、彼女の心は頑ななままでした。
失意のタジャル王子に、老婆は語り始めました。
『姫が男嫌いになったのは、実はこんな夢を見たからなのです。
それは、つがいの鳩の夢です。
雄の鳩が罠にかかった時、雌の鳩はそれを必死になって助けました。
しかし、雌の鳩が罠にかかった時、雄の鳩はどこかへ飛んで行き助けに来ませんでした。
そんな夢を見て、姫は涙を流しながら目覚めました。そして、”私は決して男性を信頼しない”と心に決めたのです』
タジャル王子は、老婆に知恵を借りて、一計を案じることにしました。
月に一度、ドゥニャ姫が散策している庭に、ある絵を依頼したのです。
それは、罠にかかった雌の鳩と鳥刺しに捕まった雄の鳩の絵でした。
庭にやってきたドゥニャ姫はこれを見て、自分の夢を誤解していたことに気が付きました。
そこに老婆の計らいで、タジャル王子が姿を現しました。
ドゥニャ姫は、美しい彼を一目見るなり恋に落ちましたが、彼は何処かへ行ってしまいます。
その夜、ドゥニャ姫はどうしても彼に会わせて欲しいと老婆に懇願します。
老婆はタジャル王子に女物の衣装を着せ、ドゥニャ姫専属の女奴隷と偽って城内に引き入れました。
そして、タジャル・ムルクはドゥニャ姫の部屋に忍びこみ、2人は結ばれたのです。
その後、何ヶ月もの間、タジャル王子はドゥニャ姫の部屋に隠されたままでした。
しかし、それを知らないタジャル王子の父君スライマン・シャー王は、彼を救出する為に、樟脳諸島に軍隊を送り込んでいました。
更には、タジャル王子とドゥニャ姫の関係も、姫の父君シャハラマーン王の知られるところになってしまい、2人は処刑寸前です。
その時、スライマン・シャー王が到着し、タジャル王子の正体が明かされ、彼がイスパハーンの王子であることが判明しました。
★両家の王様は2人を祝福し、その場で結婚の契約をして婚礼が華々しく行われました。
タジャル王子とドゥニャ姫は仲睦ましく幸せに暮らしました。
(このシーンがカードになっています)