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カップ10『海のジュルナール』
カップ10
『海のジュルナール』
トルコ
アラビアのおとぎ話
ホラーサーン地方を治める、シャーリマンという王様がおりました。彼は100人もの側室を持っていたものの、誰1人子供を授かりませんでした。
シャーリマン王は、この世の全てを手に入れているような暮らしぶりでしたが、老齢に差し掛かっても後継ぎを持つことが出来ず、絶望を感じていました。
そんな時です。若い商人が、この世のものとは思えないほど美しい女奴隷を連れて宮殿にやって来たのです。
王様は一目で心を奪われて、商人に彼女の値段を尋ねました。
商人は、3年前に法外な金額で彼女を買い付けたのですが、元よりシャーリマン王に献上するするつもりでいました。
シャーリマン王は大喜びで彼女を迎えました。
(商人には莫大な褒美を取らせて帰しました)
それからというものの、シャーリマン王は全てを捧げて彼女を愛しました。
国事や他の側室100人もそっちのけにする程でした。
それにも関わらず、彼女は一言も話そうとしません。
1年が経ちました。
彼女に対するシャーリマン王の愛情は日に日に募ります。そして、とうとう
『我が最愛の女よ、どうかそなたが私によって懐胎し、後継の愛子を授けてくれるように。アッラーにかけて、それさえ聞ければもう私は死んでも構わない』と言いました。
すると、彼女は宮殿に来てから初めて、かすかに微笑みを見せました。そして、
『アッラーは我が君の祈りに答えてくださいました。私はあなたの子供を授かっているのです』と言ったのです。
シャーリマン王は悦びのあまり、天にも昇る気持ちになりました。2つの願いが同時に叶えられたのです。
しかし、何故今まで話さなかったのか?そして、何故今日になって初めて話す決心をしたのか?と尋ねると、彼女は話し始めました。
『私はジュルナールと申します。海の王国の王女でしたが、ちょっとしたことで兄と母と仲違いをしてしまいました。
やけになって陸に登っていたところ、下賤な男に襲われかけましたが、なんとかその場を切り抜け、親切な商人に助けられ、こうしてあなたの元へ連れられて来たのです』
『奴隷となった悔しさや異国の地での孤独さゆえに口を閉ざしておりましたが、あなたが私をとても大切にしてださったので、海に逃げ帰ることはやめました』
『そして、あなたによって身籠ったことを知り、お話しする決心をしたのです』
続けて、このように話しました。
『今、差し迫って心配なことがございます。それは私のお産のことです。海の女と陸の女のお産は全然違うので、陸の産婆たちが私に無理なお産をさせないか不安なのです』
『どうか、母と兄をはじめ、身内を呼び、お産の手助けをさせることをお許しください』
王はすぐに承諾しました。
その後、ジュルナールは海の王国から兄と母、お産のために従姉妹たちを招集し、久しぶりの再会を喜び抱き合って仲直りしました。
彼らはジュルナールのお産を手伝い、無事に男の子が産まれました。
男の子はバダールバシム王子と名付けられました。
★ジュルナールは戴冠して女王となり、シャーリマン王と息子と一緒に幸せに暮らしました。海の王国から家族も頻繁に会いに来てくれました。
(このシーンがカードに描かれています)