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カルマ論で読む『海のジュルナール』
『海のジュルナール』
トルコ
アラビアのおとぎ話
『千夜一夜物語』の中で、シエラザードによって語られる物語の1つです。
とても美しく幸せそうなカードですね。
シャーリマン王には100人もの側室がいましたが、誰も子供を授かりませんでした。
何でも意のままに出来る王様の立場ですが、唯一ままならないことが、後継ぎ問題だったのですね。
それでも、シャーリマン王は、アッラーへの信仰を捨てませんでした。
そして、シャーリマン王は、女奴隷として宮殿にやってきた若く美しいジュルナールに一目惚れして、それはもう限りを尽くして大切に扱います。
それなのに、ジュルナールは押し黙ったままで、態度もつれないものでした。
それでも、シャーリマン王は頑張るのです。
1年という長きに渡って。
遂には、長年の望みだった男の子を授かるのです!
普通の王様だったら、途中でブチ切れて処刑してるのでは…と、ジュルナールの塩対応には読んでてヒヤヒヤさせられます。
(美人だから許されるんやで!!怒)
さて。この物語が、シエラザードを通してシャハリヤール王へ語られているという前提を思い出してください。
毎夜、処女を部屋に呼んでは夜明けまでに殺してしまうシャハリヤール王に、シエラザードは命懸けで物語を語っています。
それは、興味を惹く目的だけにとどまらず、『女性を大切にすると良いことがありますよ』という暗喩になっていると考えられるのです。(シャハリヤール王の思い込み=前提の書き換えのためです)
更にジュルナールは、王様に献上される前は、3年もの間、女奴隷として商人と生活を共にしていましたが、傷物にしないようにと、ここでも丁寧に扱われていました。
最初から商人は、王様に献上するつもりだったのが伺えますね。とても立派です。
ここにも暗喩が含まれていそうです。
もともとジュルナールは海の王国の王女様でした。彼女は既に価値が高かったのですね。
彼女が語るには、海の世界は地上以上に美しく暮らしやすいそうです。
ところが、ある日、兄と母とちょっとしたことで仲違いしてしまい、海の世界なんてやってられるか!とヤケになって陸に上がって来るのです。
そんなジュルナールが海辺でうっかりうたた寝していると、下賤な男に襲われかけます。それを撃退すると、今度は市場で競りに掛けられてしまいます。
それを買い取ったのが件の若い商人だったという訳です。
王女さまという何不自由のない生活から、ひとたび奴隷に身をやつし、3年間の旅路に耐えて王の元へ献上されたジュルナール。
いくら商人が丁重に扱ってくれていたとは言え、当然その旅路は過酷なものだったと思います。
このように、本来高貴な生まれの女性が、低い身分を経験して幸せを勝ち取る物語が世界には多数あるみたいですね。
(『tarot of divine』の中にも複数あります)
有名なところでは、シンデレラなんかもそうです。原題は『灰かぶり姫』と言いますが、これは聖書に於いて、悔い改める時に粗布をまとい灰を被るのですが、それと通じていると考えられます。
灰を被るというのは、身分を低くするということです。
これは、低い身分の気持ちを体験し理解することでカルマが解けるので、ネガティヴなイベントの発生を無力化して、ポジティブに転じさせることが出来るというシステムになっています。
『シンデレラは灰を被って一生懸命頑張ったので、王子様と結婚して幸せに暮らしました』
という話なのです。
シンデレラは、王子様に突然見染められたラッキーガールではなく、幸せになるための蓄積をきちんとやっているのですよ。
しかし、シンデレラの話は『魔術師』のカードになっているので、いずれそちらに詳しく書きたいと思います。
(要は、億万長者になる人って、その前にホームレスになったりしてることが多々あるのですが、そんな感じのことです)
また、海の王国を捨てて陸に上がり権力のある男性と巡り会う…というのは、『人魚姫』とも通じるものがありますね。
『人魚姫』は失敗談、
『海のジュルナール』は成功談
という感じです。
人魚姫は声こそ失いましたが、灰を被るイベントを体験出来てなかったのがおそらく明暗を分けました。
ジュルナールは、出産のお手伝いという大切な役割を持たせることで家族の価値を上げ、きちんと和解出来ましたし、大団円です。カップの10になるだけありますね。
だから、あなたが、もし今とても辛くて、しんどくても、それはジュルナールになるための経過に過ぎないのかも知れないのです。
ここでラクをすると人魚姫ルートになっちゃうかも知れません。
『自分を低くすると高くなれる』
これがカップ10『海のジュルナール』の大切なメッセージのひとつかと思います。