スケジュールのお知らせ
ワンド9『うるわしのワシリーサ』
ワンド9
『うるわしのワシリーサ』
ロシアのおとぎ話
むかしむかし、商人の父親と妻の間に、ワシリーサという美しく優しい娘がいました。
ワシリーサがまだ幼い頃、母親が亡くなってしまいます。母親は死の床で、彼女に小さな木製の人形を手渡すと、こう言いました。
『困った時は、このお人形に何か食べさせてあげてね。あなたを助けてくれるでしょう』
時は流れ、父親は再婚します。
再婚相手は連れ子に2人の姉妹を持つ意地悪な女性でした。ワシリーサは継母と姉妹に酷く苛められ働かされました。無理な仕事を押し付けられることも。
そんな時は、いつも人形が代わって助けてくれました。
美しく成長したワシリーサには求婚の声が絶えませんでした。継母は実娘2人よりも早く嫁に出す訳にいかないと全て断ってしまいます。
ワシリーサを疎ましく思った継母は、彼女を家から追い出すことにしました。
そんなある日、父親が長旅に出ることになりました。継母は娘2人とワシリーサを連れて、森の暗い小屋に引っ越しました。
ある夜、継母は家中の灯をわざと消し、ワシリーサに、隣人の人食い魔女バーバ・ヤーガから火を貰って来るよう言いつけました。
ワシリーサが人形に相談すると、『行っても大丈夫』と答えるので、暗い森を歩き、バーバ・ヤーガの家へと向かいました。
白い騎士が通り過ぎると夜が明け、赤い騎士が通り過ぎると太陽が昇り、黒い騎士が通り過ぎると夜になりました。
★バーバ・ヤーガの家は鶏の脚の上に建っていました。さらに、周りを囲む柵は人間の頭蓋骨で出来ていて目から光を放っていました。恐怖を感じたワシリーサは、人形を胸に抱きしめて柵の外で立ちすくんでしまいました。
(このシーンがカードになっています)
すると、すり鉢に乗ったバーバ・ヤーガが戻って来ました。ワシリーサが事情を話すと、バーバ・ヤーガは彼女の元で仕事を完了すれば火をあげても構わないと答えました。但し、出来なかった場合は殺されて食べられてしまうという条件です。
バーバ・ヤーガは、ワシリーサの食事にパンのかけらを与えると仕事を言いつけて寝てしまいました。
ワシリーサの仕事は、1日でケシの実を土の山から分けること、雑穀を種類ごとに分けることでした。
ワシリーサは人形に泣きつきます。
すると人形は、
『大丈夫よ。眠っていて』と言ってワシリーサを寝かせます。
ワシリーサが眠っている間に、人形が全ての仕事を完璧に片付けてしまいました。
仕事が綺麗に片付いているのを見て驚いたバーバ・ヤーガは、どうやって仕事を片付けたのかとヴァシリサに尋ねました。
すると、ワシリーサはこう答えました。
『母の祝福があったからです』
それを聞いたバーバ・ヤーガは、
『私は祝福されている人間に用はない』と、ワシリーサに頭蓋骨を持たせて家に帰しました。
それは、燃える石炭でいっぱいのランタンでした。
ワシリーサが小屋に戻ると、頭蓋骨の火が継母と義理の姉妹を灰になるまで燃やし尽くしました。